眠り姫はひだまりで【番外編】


「……そーだねえ」

けれどさゆりの視線は、携帯の画面に向けられたまま。

返事も、てきとー。

私はむっとして、携帯を覗き込んだ。

液晶に映るのは、メールの画面。

宛先、『けんちゃん♡』。

この前できた、彼氏さんだ。

さゆりはにやにやしながら、「やだ、見ないでよお」なんて言う。

私は益々頬を膨らませた。

さゆりは最近、彼氏さんにぞっこんだ。

まだ付き合って二週間だから、浮かれ気味なのかもしんないけど。


私はちらりと、今度は別の話で盛り上がっている彼のほうを見た。

…私とさゆりは、彼、川原葉くんのことが好き、…だった。

私も彼女も彼をずっと遠くから見つめて、憧れていて。

ふたりでこっそりと彼に恋をしていた。

…のに。

さゆりは、いつの間にか他のクラスに彼氏をつくっていた。


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