《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
「む。なあジュリ……なんか最後の方、馬鹿にしてなかったか?」

「そんな事無いぜ? アーサ殿下。くく…!」

 語尾の〝殿下〟を強調し悪戯っぽく笑うジュリアン。ラインアーサよりも一つ歳上の為か、何時もこんな調子でからかってくる。

「ったく! いいんだよ。俺はこの格好の方が動きやすいし、特に街の中で目立たないからな」

「何でさ? 訓練所(うち)の視察に来たんだろ? 大々的にド派手に来ればいいじゃん! 陛下だったらもっとばーんっとやるじゃんか」

「父上と違って俺はそういうのが苦手なんだよ」

 今回の視察も公的とはいえ、訓練場の隊員にはあまり大きく通達せず、数人の関係者とハリのみを連れて来ていた。普段通りの訓練風景が見たかったからだ。その為ラインアーサは正装はもちろんの事、いかにもな王子らしい服装を避けて何時もの旅人の様な装いである。このまま街にだって繰り出せる程だ。

「ま、お前がいいなら別にいいけどね。それよかアーサももう二十三だろ? そろそろ身を固めるのか?」

「はああ……ジュリもその話題に持って行くのか? 最近、誰に会ってもそんな話になって耳が痛いよ…。昨日だってジュストベルに説教されたばかりだってのに」
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