《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~

ふたりの想い


「……なあ、もう少しそっちにいけよ」

「そ、そんなこと言ったって…!」

 結局ラインアーサはスズランと一緒にベッドで眠る事になった。
 大きな広いベッドとは言え、すぐ隣で手を伸ばせば簡単に触れられる所にスズランが居るので酷く落ち着かない。
 ここ最近は長雨続きの所為か夜はやけに冷え込む。

「……ちゃんと毛布かかってるか?」

「うん。でも少し寒い、かも」

「寒い? もう湯冷めしたのかよ」

 思わずスズランの手を探り掴むとその指先は思いの外ひやりとした。

「ひゃぁ! きゅ、急に触らないで!」

「わ、悪い…っ俺、やっぱり隣の部屋行くから、お前一人でベッド使えよ」

「だ、だめ! ライアが風邪ひいちゃうもの…! だったらわたしが長椅子(カウチ)で眠るからライアがベッド使って!」

 またこのやり取りだ。
 先程からずっとそれで揉めているのだ。

「何言ってるんだ。めちゃくちゃ冷えてるくせに!」

「だって…」

「ああ、もう。これじゃあいつまでたっても眠れやしない」

 そう言いラインアーサはスズランを背中から抱き寄せて毛布を被り直した。

「っきゃ!?」

「これしか方法ないだろ? 嫌でも我慢してくれ」

「…っ」
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