《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~

対等


 一段と強くなる雨が窓の硝子(ガラス)を濡らす。一向に止む気配はなく激しく降り続いている。
 ラインアーサは一旦スズランをユージーンに任せ、セィシェルの自室へ上がりこんだ。二人きりで話し合う場が整う。

「全くひどい雨だな…。で、一体何だよ。俺に話ってのは。俺は別に逃げてなんかない! 逃げてんのは逆にあんたの方じゃあないのか?」

 窓の外を確認しながら振り向き様に鋭い視線をよこすセィシェル。一方ラインアーサは部屋の入り口の柱に少し(もた)れかかり腕を組みながらその視線を受け流す。

「お前の言う通り、図星だ…。今までは自分に嘘をついて誤魔化して逃げて来たが、やめた。だからお前とも対等に向き合う事にする」

「はぁ? 対等!?」

「……セィシェルお前、俺の名前知ってる?」

「ぁあ? 何なんだよ。ライア……だろ? 前からずっとそうだろうが、違うのか?」

 急な質問にセィシェルの不機嫌度が増す。

「ラインアーサだ……」

「あ? だから何だよ!?」

「───ラインアーサ・S・ローゼン。それが俺の本名」

 途端にセィシェルの顔色が変わってゆくのが分かる。真名(まな)を名乗れば流石に誰でもその意味に気がつくだろう。
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