《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~
 ヒト族の暴走は迫害だけに留まらなかった。取り憑かれたかの様に自然破壊を繰り返し行い、更に勢いづいたヒト族は、リノ族を恐れ、恐れは恐怖から憎しみ、嫌悪、憎悪へと変じて行った。リノ族たちを〝魔の象徴〟としてこの世界から排除すべき対象として貶めたのだ。
 ヒト族の勢いは転がり落ちるが如く膨らみ続け、多くの者が〝リノ族狩り〟の被害を受けた。たくさんの命がその犠牲となったのだ。


 残されたリノ族たちは追い詰められた末、決断した。

 ならばヒト族による妬みや嫉みが混沌と渦巻く世界を捨てようと。


 この世界を……諦観(ていかん)した。



 己を奮起させ、リノ族たちはこの世界から完全に隔絶(かくぜつ)されたもう一つの世界を創り出す事に成功した。残されたリノ族ちはそこへ移住を決めたのだ。


 リノ族の理想郷。

 ───リノ・フェンティスタ、という箱庭(せかい)へ。



 望み通りリノ族が姿を消した現世(うつしよ)という世界にはヒト族だけが残された。
 そうして手に入れた安息も束の間。現世という世界は均衡と秩序を失い、穏やかだが確実に崩壊の道を辿って往くことになった……。


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