《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~

決意と前進


 再来月に迫る収穫祭に向けて国中がその準備で慌ただしい。一年でシュサイラスア大国が最も騒がしくなる時期だ。王宮でも祭りの支度は着々と進められていた。
 例の事件を解決させたあの次の日から早くもひと月半。ラインアーサは日々酒場(バル)に通いつめている。
 未成年者の誘拐は収まった。だが、スズランが狙われていると言う現状から、ラインアーサはその護衛と酒場(バル)の手伝いを自ら申し出た。本来であればスズランを王宮にて保護するのが一番妥当だ。しかしどうしても本人が首を縦に振らず、頭を悩ませていたが店の手伝いがてら出来るだけ傍にいる事にしたのだ。

「マスター! 裏の片付け、終わったよ。食材の仕入れ数の確認も完璧だ」

「有難うございます! 貴方様に毎日こんな雑用を押し付けてしまって、本当になんと言っていいのか」

「いいんだって! 俺がやりたくてやってる事なんだし、それに毎日スズランに会えるから嬉しいよ」

 軽い口調のラインアーサだが、やはりユージーンは気後れした様に続けた。

「しかしもうひと月以上も。やはり王宮で…」

「親父! スズを守るのは俺の役目って言ったろ。わざわざこいつに頼まなくたって平気だ!」
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