《完結》アーサ王子の君影草 ~ラインアーサの些かなる悩み事~

君は何処へ

「───何をするつもりだ! 開けてくれハリ!!」

 力任せに扉を叩くが中からの反応はない。
 施錠された扉はハリの魔像術(ディアロス)によって封じられているのかびくともせず、取っ手を引くも無言を貫く。

「スズラン……っ痛ぅ…! はぁ…っ」

 扉を背にずるりと座り込む。一先ずこの傷を治すのが先決か。腕や腿に突き刺さったままの硝子(ガラス)の破片を強引に抜くとまた別の痛みが走る。ラインアーサは激痛に耐えながら荒い呼吸を整え瞳を固く閉じた。
 集中して風を喚びおこし、身体全体に柔らかく纏わせる。自身で行う癒しの煌像術(ルキュアス)は全快とはいかずとも止血と鎮痛効果で、ある程度応急の措置にはなった。
 しかしのんびりしてはいられない。先ほどよりも更に嫌な予感が増す。このざわつく感覚の正体が何なのかは分からないが、時が経つにつれ焦りが大きくなりラインアーサは力を込めてに扉を叩いた。

「ハリっ! 開けてくれ!! 開け…っ!?」

 しかし今度は唐突に左腕に疼痛(とうつう)が走った。この痛みの正体は左腕にある例の刺青だ。刺青は熱を放ち大きく脈を打つ度に痛みが増していく。

「何で…っこんな、時に…! 駄目だっ! お願いだから大人しくしてくれ!! っああ、、っ! くっ…ああああっ!!」
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