《完結》アーサ王子の君影草 上巻 ~忘れられた庭に咲く誓い~

「────ライア。今日もあの酒場(バル)に出向くのですか?」

 ここ数日。日没後になると決まって王宮を抜け出すラインアーサにうんざりした様子のハリが立ちふさがった。

「……ちょっと、野暮用があってな」

「夜遊びではないだけましですけど、何故毎晩同じ酒場(バル)に通う必要が? あそこで得られる情報はもうたかが知れてる筈ですが」

 あれからラインアーサはあの忌まわしい誤解を解くため例の酒場(バル)へほぼ毎日通っていた。しかし一向に誤解が解ける兆しは見えず、というよりもますます立場が悪くなっている様に思う。

「……なあハリ、俺って変態か?」

「唐突に何を言うんです? 貴方が変態かどうかなどは知りませんが、女性の敵ということは知ってますよ」

 無表情のままハリが答えた。

「なんだよハリ。冷たいなー」

「よく分かりませんが、あまり目立った事をされますと陛下の心配の種が増えるので程々になさってくださいね」

「ああ……分かってるつもりだよ」

「……そうですか」

 小さくため息を吐きながら忠告するハリを横目に、ラインアーサは今晩も例の酒場(バル)へと足を運ぶ。
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