好き嫌い。
「奥井くんの部屋にさ、ピアノ弾いてるシルエットの写真が飾ってあるんだって。

…実里だよね、それ。」

…確かにピアノ弾いてる時に何回か出くわしたけど…。


あ、じゃあもしかして。


「あたし…写真貰ったの。大好きだった音楽室のある窓から見える風景の…。」


あたしを見ていたのなら、気付いたのかも……。


「ちゃんと向き合えばよかったね、実里。」

「その時に向き合えばもしかしたら、気持ちが通じ合ってたかもね。」

…もう遅いよ。

あれから随分時間が過ぎた。
あたしも、こうちゃんも、それぞれの時間が過ぎたんだから。


「過去の話だよ。忘れて…。」


そう。

蓋をして鍵をかけて。

忘れるんだ。


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