伝わらない、伝えられない
おまけ


屋上で一人になった葵は走り去っていく悠斗の後ろ姿を見下ろしていた。


その顔はやけに嬉しそうに見える。



「ここに居たんだ」



背後から聞こえてきた覚えのある声に、葵は振り返ることはなかった。



「ちとせも悠斗も帰ったよ?って、知ってるよね」



明は歩みを進めると、葵の横に立ち止まった。そして彼女のスクールバッグを差し出す。



「ありがと。あんたもバカね…自分にメリットない事やっちゃって」



そう言ってカバンを受け取りながら葵はため息をついた。


その言葉に苦笑いを浮かべる明。



「俺だってさ。苛つくことはある訳ですよ」


「…その原因は、悠斗?」



葵の問いかけに明は頷く。苛ついているという割には穏やかな表情をしているが…


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