伝わらない、伝えられない
考える人side悠斗


葵と遊び終え、さっきやっと帰ってきた。


よっぽど部室に籠りきりだったのがストレスになっていたのか。


カラオケに行った後も色んな場所に連れ回されるハメになった。


本当にあいつは文化部なのか?


一応運動部に入っている俺の方が先にストップをかけた位だ。


どんだけ体力が有り余ってるんだよ、化けもんか。


カバンを放り、疲れた体をベッドに腰掛ける。


遊んでる間も今も、笹原先輩と帰ったちとせが気になって仕方がなかった。


どこに行ったのか、まだ二人一で緒に居るのかって…


俺が気にすることじゃない、もちろんそんなのは理解しているんだが。


頭に浮かぶのはちとせの明るい笑顔。


疑いを知らない澄んだ瞳。


それを世間ではバカ正直と言うのかもしれないけど。


でも一番は、夕日に染まったいつもと違う様子のちとせ。


俺の知らない…ちとせ。


そのことに、俺の胸がざわつく。


なんでちとせの事ばかり考えてしまうのか。


前々からそうなんだよ。


気付けば目で追って、世話を焼いてしまう。


ほっとけないって言うか…妹、みたいな?


うん、きっとそんな感じの存在だ。


< 42 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop