伝わらない、伝えられない



それは昼休みになり、ご飯を食べ終えて4人で話している時のことだった。



「瑞希ー、呼ばれてんぞ!」



クラスメイトの男子のあたしを呼ぶ声が教室に響く。


呼ばれた男子の方へと目を向けると、その隣には拓真先輩が立っている。


なんで先輩があたしの教室に…?


不思議に思いながらも急いで先輩の元へと駆け寄る。



「よぅ、ちとせ。昨日ぶり」


「こんにちは、拓真先輩。今日はどうかしたんですか?」



わざわざ階も違うあたしの所に来たんだ。


用がなければ顔を出しには来ないはずだし…



「これ、昨日俺の家に忘れてっただろ? なかったら困るんじゃないかと思ってさ」



「あっ、すみません! わざわざありがとうございま…す……」



そう言って手渡されたのは確かにあたしのスケジュール帳。


今日はバイトのシフトが出るから届けてくれたのは本当に助かる。


だけど、だけどだ。


今…この人、何て言った?


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