伝わらない、伝えられない
後輩と悠斗side悠斗


「まぁまぁ。これでも食べて落ち着いて下さいな、ね?」



ちとせから差し出されたのはアイスだった。


パッケージにはチョコクッキーとでかでかと書いている。


こんな寒い時期に?しかもアイスのひとつで事を済まそうという算段か…


甘いな。もちろん食べるけど。



「あー、あのさ…悠斗の友達、待ってるんじゃない? 早く行きなよ」



そう言われて俺は後輩達へと顔を向けた。


かち合った瞳の奥には期待が込められているのが分かる。



「今日はこれで解散な?次会う時になんか奢ってやるよ」


「「えーっ!?」」



予想していた言葉とは全く違ったのだろう。


こいつ等は必死に俺を引き止めようとする。


飯を奢ってほしいんじゃない。まぁ少なからずはあるだろうが…


本当の目当てはちとせだ。


何故学内でこんなにも笹原先輩との噂が絶えないのか。


それは二人が仲の良さだけが理由じゃねぇ…


二人の姿があまりにも絵になるからだ。


転校してきたばかりのあの頃は、性格も相まってガキっぽい印象が強かったちとせ。


だが高校生にもなると、中身はともかく見た目が段々と大人びてきた。


元から結構綺麗な顔立ちしてるのもあるが。


今じゃ相当の奴に告られてる。その瞬間を見たこともある位だ。


まぁ本人には一切自覚がなく、告白した奴らを物好きだと思っているけど。


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