伝わらない、伝えられない

「付き合えない、ってよ。好きな奴がいるんだって、そう言われた…」


「そう、なんだ」



ちとせと明が付き合わない。


それを聞いて安心している自分がいた。


だけどそれより気になるのが、ちとせの好きな奴のこと。


俺も好きな相手がいるっていうのに…


どうしてちとせの想い人を気にするのか。


全く断ち切れてねぇじゃんか。


一旦落ち着いた気持ちがまたざわつき始める。



「そいつさ、前からちとせにスゲー想われてて…
俺そいつになりたいって、何回も思ってた」



俯きながら話す明。


表情はわかんねぇけど、辛いのは声だけで伝わってくる。


前からとか何回も思ってたって事は、明はちとせに好きな奴がいんのを知ってて告ったのか？


しかも相手も分かってる上で？


俺には…到底できなそうにない。


改めてそんな行動をやってのける明を尊敬した。


それに比べて俺はどうなんだ？


好きな奴に告白するどころか気になる相手が増えるなんて…