危険なキス
「じゃあ、柊はそっちまとめて」
「はーい」
クラスのみんなが帰る中、湯浅先生も物理室からいなくなっていた。
必然的に、残っているのはあたしと楠木二人だけになる。
なんだか妙に緊張した。
なんとなく、沈黙がはしって、居心地が悪くなる。
そう思っているのは自分だけかもしれないけど、あたしはこの空気をなんとかしたかった。
だけどそう簡単には話題が見つけられず、あたしから出た言葉は……
「最近、麻衣子とどうなの?」
一番聞きたくない質問だった。
その言葉を聞いて、楠木は手をとめずにチラッとだけあたしの顔を見た。
「べつにフツー」
「フツーって……もっとこう、なんかないの?最近のデートとか」
「……」
なるべく話題を膨らまそうとしているのに、なぜかちょっとだけ不機嫌の楠木。
あたしには、その理由が分からなかった。