危険なキス
「もともと俺は、お前がとっくに失恋した相手にズルズル引きずってるから、それを忘れさせる手伝いをしてただけ。
でも失恋じゃねぇんだったら、俺の出番なんてないじゃん」
「そ……だけど……」
「今まで散々いじめて悪かったな。
もうかまわねぇよ」
「……っ」
先生はそう言い捨てると、再び先を歩き始めてしまった。
あたしには、先生を追いかける理由なんてなく
ただ去っていく背中を見つめることしか出来なかった。
頭の中にずっといるもう一人の男。
でもその人にとって、あたしはただの暇つぶしの相手にしかすぎない。
そしてあたしも
先生のことなんて大嫌いだ。