危険なキス
 
「もともと俺は、お前がとっくに失恋した相手にズルズル引きずってるから、それを忘れさせる手伝いをしてただけ。
 でも失恋じゃねぇんだったら、俺の出番なんてないじゃん」

「そ……だけど……」

「今まで散々いじめて悪かったな。
 もうかまわねぇよ」

「……っ」


先生はそう言い捨てると、再び先を歩き始めてしまった。



あたしには、先生を追いかける理由なんてなく
ただ去っていく背中を見つめることしか出来なかった。




頭の中にずっといるもう一人の男。

でもその人にとって、あたしはただの暇つぶしの相手にしかすぎない。



そしてあたしも

先生のことなんて大嫌いだ。

 
< 214 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop