危険なキス
あの日、あいつを抱いてしまったけど、別にそれからの関係を変えるつもりもなかった。
ただ、あいつといるのは楽しいから、教師となっても、からかうのは続けようと思ったけど……。
でも何も変わってない。
変わったと言えば……
机に向かって勉強する以外の姿を見るようになったこと。
あいつが好きなやつのことで一喜一憂する姿を、この目で見るようになったこと……。
俺が思っていた以上に、紫乃は感情が豊かで、友達の前では笑うし、好きなやつの前では取り乱したりもするやつだった。
俺の中で、紫乃の存在が大きく変わったのは、紫乃の好きな男…楠木が紫乃を好きだと告白しているのを聞いてしまったとき。
潮時だな、と思う反面
自分の中で、妙な焦りを感じた。
そんな自分を押し込んで、あいつを解放した。
それなのに……
ようやく好きなやつと付き合うことが出来てたってのに、捨てられた子犬のように俺を見つめる紫乃。
何度も抱きしめそうになったのも事実だった。