危険なキス
 
そのキスは、あの時されたキスのように、悲しみはどこにもなかった。


まるで想いが伝わってくるような、優しいキス。


これは、自惚れてもいいのだろうか……。


「本当は今すぐこの場でめちゃくちゃにしてやりてぇけど……場所が場所だしな」
「あっ……」


言われて我に返った。


ここは学校の保健室。
つい、いろいろ言ってしまったけど、もしかして保健室の先生に聞かれてしまったんじゃ……


「心配しなくても、今は席外してるよ」
「よかった……」


さっきの会話が聞かれてしまったら、とんでもないことになる。

せっかく、うまくごまかして、あたしと先生は何もない、ってことになってるのに……。



「今週の土曜、また俺の家に来い」
「えっ?」
「勉強見てやる」
「……はい…」


それだけを約束して、先生は保健室から出て行ってしまった。
 
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