太陽と月


「何かあったの?」



いつもにない光景に、新入社員の子に問いかける



いつも賑やかな事には変わりないけど

この時間はいつもなら掃除してる時間だし

何かあったのか?



微かに背伸びをして輪の中を覗き込もうとする俺に微笑む新入社員




「実は――」

「あ―っ!! 大西おはようっ」




少し頬を染めた新入社員の小さな声を遮る様に、飯島部長の声が突然響く

その瞬間人だかりが割れて、俺と円陣の真ん中にいた人までの道ができる



真っ直ぐに、伸びている

その先には




「おはよう。大西くん」




真ん中にいたのは――悠理さんだった





「どうしたんですか?」




興味本位

もともと俺は本能のままに動く人間なんだと思う



頭の中で警報が鳴っているにも関わらず

彼女まで続く道を一歩一歩進んでいく




どこか、いつもと違う

穏やかな顔をした彼女の元まで




「どうしたんですか?」

「聞いてよ、大西! ビックニュースよっ」

「ビックニュース?」



興奮気味で俺の肩に腕を回した飯島部長

朝から酒でも飲んでるんじゃないかと思う程、異常にテンションが高い
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