太陽と月


自分のデスクに戻って、今日来るであろう新入社員の履歴書に目を通す



どこか、まだ学生の匂いがする

垢抜けていない感じ

――真っ白な、人材





「瀬川...花音」




その名前を聞いて、真っ先に思い浮かんだのは、バッヘルベルのカノン

俺が好きな曲だ




妙な親近感を憶えながら、約束の時間が近づいていたので、玄関まで向かう事にした




ようやく冬を抜けて、春の日差しが降り注ぎ始めた季節

まだ少し肌寒いけれど、徐々に咲いてきた花々が世界を明るく灯す




「どんな子かな」




履歴書に張られた写真に写る彼女を見つめて、小さく呟く

どこか不安そうに写る彼女は、ただじっと俺を見つめ返した


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