太陽と月



「私、いつでもお付き合いしますよ」

「え?」

「主任がここに来たい時、いつでもお付き合いしますよ!」

「――」

「だって、1人でご飯食べても美味しくないじゃないですか」



ズイッと顔を主任に近づけてそう言う


一人暮らしを始めてから、気づいた事

それは、一人の食事が美味しくない事


今まで家族に囲まれて食べていたから、尚更そう思う



それに、主任のあのどこか寂しそうな横顔を見ていたら、いつの間にかそう喋っていた



私の言葉と行動に、驚いた様子で体を少し引いた主任だったけど

私の言葉の意味を理解してか、ふっと表情を崩して微笑んだ




「本当・・・瀬川には敵わないな」

「え?」

「そんな事言われたの初めてだよ」



どこか空笑いの様にそう言って笑った後、微かに瞳を伏せた主任

真っ赤に燃える様な赤ワインを見つめて、チンっと一度指でグラスを弾いた




「ありがとう」




そう言って笑った主任は

いつもと少し違った

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