聖なる夜に永遠の約束を【クリスマス企画】
ホワイトクリスマスの夜空

12月24日、街ではクリスマス全開モードで、カップルの数がいつもの倍以上はいる気がする。

まだ昼間だというのに、空は灰色の雲で覆われているせいか、薄暗い。

そんな中で、俺はクリスマスには欠かせない柊(ひいらぎ)を、実花のお墓へ持って行ったのだった。

俺の名前の漢字と同じ柊を、実花はとりわけ好きだった。だから、毎年クリスマスには、柊を飾っている。

「今日は、いつもより冷え込むな。実花も寒いか?」

言葉を発する度に出てくる白い空気。
天気予報では、今夜はホワイトクリスマスになると言っていた。

「あの日と同じだよ。今夜もホワイトクリスマスだ」

実花が逝ったクリスマスイブも、ホワイトクリスマスだったな。

と思い返せば、いつも涙が出ていたけれど、今年はそれが出てこない。

4年という月日と、紗雪と過ごした1年とで、俺の心は変わってしまったのだろうか。

「でもな実花、俺は忘れてないよ。ほら、お前から貰ったマフラーを、ずっと使ってる。これで、俺たちはいつも一緒だもんな」

そう言いながらも、ちらほらと頭をよぎるのは、紗雪の笑顔だ。

昨日、別れ際に笑顔を浮かべていたけれど、本当にこれで良かったのか。

紗雪はずっと、実花を忘れられない俺の側で、いつだって笑ってくれていた。

だけど、恋人がいくらこの世にいない相手とはいえ、いつまでも元恋人を想っているのを感じていて平気なわけがない。

もしかして今まで、紗雪は無理に笑っていたのではないのか?

昨日も、無理に笑顔を作ったのではないか?

そう思うと、いてもたってもいられなくなり、紗雪に電話をしていたのだった。

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