さかのぼりクリスマス

 大の字。酔っぱらい。赤い顔。お酒のにおい。発言はラーメン。

 クリスマスムードはすっかり皆無。でも、悪い気はしない。むしろ、うれしいが占めていた。


 …つきあい始め、みたいだな。

 サトルの方からよく話すのも、ちょっと甘ったるくひびく、わたしの名前も。


 サトルはあまり、感情表現をしない。好きなんてほとんど言わないし、口数も多くない。

 つき合ってからの期間が増えていくほど、減っていく。そういうものなのかな。結婚したら、お互い空気みたいになるって言うしな。

 でもわたしにとっては、サトルはまだぜんぜん、空気じゃないんだけどな。ドキドキの対象なんだけどな。

 サトルといるとき、わたしは無駄に「おいしい」を連呼する。

 おいしい。きれい。すごい。まだ沈黙に慣れないから、埋めようとしてしまって、わたし一人だけ。そういうの、たまに、さみしいから。


 窓に近づき、カーテンを開ける。

 指先にしみる、シンと冷えた空気。視線の先に広がる、とうてい数え切れない光。


「……わ、きれい」


 思わず、つぶやく。

 たとえば、こういうとき。

「うん、そうだな」って、一緒に笑ってくれたら。それで十分埋まるんだけどな。

 おいしい、きれい、すごいって、繰り返さなくても、安心するんだけどなぁ。

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