さかのぼりクリスマス
◇Second X’mas
Second.


「ナナちゃん?」
「…ソワソワします」


 テーブルに案内されて、引かれたイスに座って。もれてしまった第一声が、まずそれだった。

 スタッフがスーツに蝶ネクタイ、な格好のレストラン。テーブルには高級そうな光沢をはなつクロスがしかれていて。

 わたしのソワソワにとどめをさすように注がれたのは、次から次へと気泡を生み出す、黄金色のシャンパンで。


「や、おれもこういうとこ来るの、慣れてないよ」


 低い、のんびりした声。

 正面に座るヤナギ先輩の肩には、まったく力が入っていない。言葉の信憑性、ゼロだ。


「うそ!?先輩ぜんぜん落ち着いてる!!」
「そんなことない。ドキドキしてるけど…でもホッとしてるのもある」
「なんで?」
「靴脱ぐ店じゃなくてよかった。さっきから靴下、親指のところがどうも危ない気がする」


 思わず吹き出して笑ったら、テーブルに飾ってあるろうそくの火が揺れた。


「ちゃんと確認してきてください、大事な日なのに」


 そう言って、テーブルの下でつま先をつっつくと、先輩は楽しそうに笑った。


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