Street Ball
本戦準決勝2
二人共、俺が今出来る限りの事をしていると認めているので、何も言わなかった。


蟀谷(こめかみ)を伝う汗が、顎先へ抜けて落ちていく。


だが、何かが今一つ何かが足りない。


そんな気分から、プレーにキレが出ない事も、シュートを決めるという自信が沸かない事も分かっている。


「…あれ?翠ちゃん来てるぞ。」


腹と背中を膨らませながら、肩を揺らす呼吸の中で、鉄がギャラリーの方を指さした。


プレーの時よりも素早く振り返ると、確かにギャラリーに混じって翠の姿が有った。


インディゴのショートパンツに、スタッズ付きのサンダルまで細い足が伸びている。


カシュクールのワンピの横には、トレードマークの緩い縦巻きの二つ結い。


あれ程、顔を合わせ辛いと避けていた二週間が嘘のように、気付けば吸い寄せられるように歩き出していた。


隔てるフェンス越しに、口を尖らせた不満顔の翠が佇んでいる。


「…来てたのか。」
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