兄弟的同性愛事情



「ねぇ~李堵、弟くん取り込み中みたいだし、帰ろ?」


廊下から唐突に聞こえてきた声。


いま、李堵って言った?!


「おぉっと?李堵さん?!」


ももが目を丸くする。


立ち上がって振り向くと、廊下からこっちを見ている兄ちゃんと


パッと見女の子か男の子かわからない子が腕を組んで立っていた。


なんで、兄ちゃんがここにいるんだよ?


最近距離をとられていたし、俺と関わりを持とうともしなかったくせに。


なんでよりにもよってこんなときに…


普通の人なら、俺がライトと手を繋いでても別になんとも思わない。


思ったとしても、深く考えないだろう。


でも、兄ちゃんは違う。


「あぁ」


隣の子に返事をした兄ちゃんは、明らかに俺のことを睨んでいた。


…なんなんだよ。


「兄ちゃんっ、待って!!」


声をかけたときには、もう歩き始めていた。


すぐに廊下に飛び出して兄ちゃんの左腕を掴む。


無理矢理足を止めさせて、俺は少し上がった息を整えた。


「何か、用事があるんじゃないのかよ?」


動揺してる。


声が震えていた。


「…別に、なにも」


ブラウスを掴む手に力が入る。


この人はなんでいつもこうなんだ。


気まぐれだし、すぐに機嫌悪くするくせに、自分が気に入らないことがあるとその原因と関わろうともしない。


俺は兄ちゃんのそーゆーところが大嫌いなんだ。


なにも話してくれないから、俺にはいつも兄ちゃんのことが全然わからないよ。


「ねぇ、李堵の腕を離してよ」


なんなんだよ。


さっきからずっと俺のことを睨んでくる奴が、兄ちゃんと俺の間に入ってきた。


クリーム色のフワフワした髪の毛が犬みたいだ。


右目は青、左目は灰色の…白人のように色が白い男の子。


兄ちゃんの右腕にしがみついて、まるで「李堵は僕のだ」って俺に見せつけているよう。


腹が立つ。


兄ちゃんにも、こいつにも。


「ハルヒ、先に教室に帰ってて」


「嫌だよ。僕はこの子に話があるの」


はぁ?


初対面なのにすごい睨まれてる。


なんなんだ、こいつ。


「李桜くん…だよね?」


「そーですけど」


「李堵のこと、いらないならちょーだい?」


…は?


「僕は君みたいに行為を拒絶したりしないし。浮気する気もないし?だから、」


パシンッと乾いた音をたてて、俺と兄ちゃんの手は離された。


ハルヒと呼ばれた男の子が、俺に微笑んで


耳元で


「もらうね?」


囁いた。









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