White X'mas

「溜め息なんか吐くなよ。イイ男が台無しだぜ?」
「幼稚園の頃からモテまくりの男に言われても、イヤミにしか聞こえない」
「おいおい、顔は一緒だろ?」

肩をすくめて、兄貴は言う。

「そうツンケンするなって……ほら」

ぴらっと見せられたのは、1枚のチケット。

「これやるからさ」
「クリスマスコンサート?………男2人で?」
「ばぁーか。行くのは、お前1人だよ」
「この忙しい時期に?そんなヒマないだろ。お前のおかげで配達も予約も山積みだ」

兄貴はポインセチアの鉢を並べながら言う俺の前に回り込み、ぐっと顔を近づけて来た。

「この間の、可南子ちゃんからの注文」

可南子ちゃんというのは俺達が店を始める前からの知り合いで、時々、花を買いに来てくれる、兄貴のお客さんだ。

「クリスマスに女が花なんて変だと思って訊いてみたら、相手は女性だって言うんだ」

手に持ったチケットで口元を隠し、笑いをこらえる様子の兄貴。


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