闇の雨


 時間が遅いせいもあり、車窓からの景色は本当に暗く、通りにひっそり立つコンビニの明かりだけがやたら目立つ。二人はそこで缶コーヒーを買って家に戻った。



「お帰りなさい」

 憔悴した表情の耕助を、ずっと起きて待っていた紗織と爽が出迎える。二人がリビングへ行くと、ソファに横になった快も、起きて二人を待っていた。

「結奈ちゃんは――」

 寝ずに起きて待っていた三人に、耕助が安置所での事や事件の事、そして苦しい表情で、興奮した愛美により、瀬奈の出生話が瀬奈自身に語られた事を報告した。

「遺体は愛美さんが引き取って行ったよ……」

 全ての報告を終えた耕助が疲れた顔でソファの背に体を預けると、傍らに座っていた紗織が心配そうに耕助を見つめ、そんな両親の様子を爽が黙って見つめていた。そして横になったまま話を聞いていた快の側には、瀬奈がいた。

「大丈夫か……?」

 東の空が明るくなり始めた頃、皆がそれぞれの部屋に戻り、快も瀬奈に支えられながら、自室のベッドに横になった。

「一緒に……寝てもいい?」

 ベッドの脇に立って瀬奈が問う。快はうなずくと少し体をずらし、瀬奈の為のスペースを作った。瀬奈はそのスペースに体を滑り込ませると、疲れたように目を閉じた。

「ごめんね、心配かけて」

 目を閉じたまま瀬奈が呟く。快は黙って瀬奈に体を寄せると、そっと抱き締めた。

 ――ごめんな……。

 目を閉じながら、快は彼女の髪にそっと唇を寄せた。

 ――ごめんな、こんな特こそ俺が、お前を支えなきゃいけないのに……。

 本当に疲れていたらしく、すぐに瀬奈が寝息を立て始める。

 大変……だったな。

 結奈の事件、瀬奈の出生の真実。一夜のうちに明かされた二つの大きな事件は、瀬奈ばかりでなく、快や耕助たちにも、大きな影を落とした。



 自分を呼ぶ瀬奈の声に我に返ると、いつの間にか、病室の入口に瀬奈が立っていた。

「どう?」

「ん……」

 カーテンで薄く仕切られた空間。椅子を取って瀬奈が座る。もうすぐ社会人と言う事で、彼女は長かった髪をバッサリ切り落とし、パーマをかけ、少し大人っぽい容姿になった。

「カーテン閉めて」

 快が言うと、瀬奈は立ち上がると開いていたカーテンを全て閉め、快を見た。

「落ち着かない?」

「ん……」
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