シンデレラ☆ジョブ

「ガーデンパーティーだから、挨拶したら帰るよ?」



「はい」





 式が終わって庭に出ると

 輝く芝生の上

 白いクロスのかかったテーブルに

 色鮮やかな食事が並んでいた。





 あっ…

 向こうに式と同じ姿の花嫁が見えた。



 小さくて華奢で

 ふわふわの天然パーマに

 マリアベールとピンクの薔薇が

 とても似合っていた。





「……」





 あれが

 平井さんの元彼女。



 遠くから見つめる

 平井さんの眼差しがとても優しくて

 胸の奥が苦しくなった。



 この人のために彼は

 あたしを雇ったんだ。





「……」





 ヘンな顔してちゃダメだ

 ちゃんと彼女に見えるようにしないと



 あたしは痛む胸を心に閉じ込め、花嫁さんに無邪気に憧れる彼女の顔で、平井さんに耳打ちした。





「後少しです、頑張って!!」





 驚く平井さんの顔、あたしはとびきりの笑顔で彼を見た。



 みんなに幸せな恋人同士に見えるように。



 今日の為に、あたしは雇われたんだから……。





 少しして、2人に挨拶をした。



 バツの悪そうな平井さんの笑顔に

 花嫁と花婿は、本当に嬉しそうに

『聖人おめでとう』と

『聖人くんありがとう』を言った。



 気にしてたこと上手くいったのかな?





「……」





 これで

 あたしの役目は終わり



 明日には

 里美と決めたアパートを契約して

 そのまま出て行こう。




 この胸の想いを

 平井さんに気付かれる前に。



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