君と歩いていく道
本当はさびしいのだと言ってくれるだけでいいのに、真崎はそういった甘えをほとんど表さない。
恐らく幼い頃から両親不在の家庭で育ったためなのか、そういった感情表現がとても下手なのだ。
だから、珍しく甘えてきた時は、少し驚いた。

「明日の朝は、一緒に出ようね。」

「ああ。」

歯を磨いてから、二人は揃って寝室へ向かう。

口数の少ない紺野だったが、真崎は彼の示す不器用な愛情表現がとても好きだ。
だからこそ心配をかけまいとするのだが、どうやらいつも逆効果になってしまうらしい。

「おやすみ。」

「おやすみなさい。」

普段、コンタクトレンズをしている彼の、眼鏡姿を見られる時間は短い。
なんとなく見入っていると、気になったのか真崎の目が開いた。

「あまり、見ないでくれ。」

薄い暗闇の中で照れたようにいうから、真崎は笑ってしまった。

「寝るぞ。」

「うん、ごめん。おやすみ。」

静かな部屋に、かちゃ・・・と、眼鏡をはずして置いた音が響く。
今度こそ寝なければと、真崎は紺野の腕の中で目を閉じる。

この瞬間が一番幸せなのだと言ったら、彼はなんと言うだろう?



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