君と歩いていく道
紺野にとってはスキャンダルのネタにしかならない、自分の存在。

若手プロテニスプレーヤーとして有名な彼と、自殺未遂まで起こしたピアニストなんて、釣り合うわけがない。
そう思っても紺野から離れられないのだから、やはり大人しくしておくべきだったのだ。


「玲、どうした?」

「ごめん。ちょっと、ボーっとしてた。」


沈みかけた夕陽の前では、青ざめた顔色も分からないからありがたい。

心配で見にきた紺野に笑いかけて、真崎はボトルを持って行く。
そんな彼女を不審に思いながらも、紺野は追いかけることしか出来なかった。

一瞬見せていた表情はとても気になっていたが、今は友人たちと笑っている。
聞くに聞けない状況なので、今日一日が終わってから聞くしかないようだった。

真崎の様子が少しおかしいのは、水瀬もすぐに気がついた。

水瀬には、だいたい想像がつく。
彼女がまだ知らないところまで、調べ上げているからだ。

だからこそ心配なこともあるので、とりあえず一人で食器を持っていこうとする真崎を捕まえて、無理やり手伝う。

「おい、何があった。」

食器をシンクに置いた真崎は、やはり彼には気づかれてしまうのだなと、諦めたように溜息を吐いた。


「信吾には、隠しごと出来ないね。」

「はぁ?紺野にも、だろ。」


水瀬の揶揄に真崎は首を横に振る。


「光博には隠しごと出来ないんじゃなくて、したくないんだよ。」


多分、隠そうと思えばいくらでもできるのだ。だけどそれをしたくないのは、彼からの信頼を失いたくないから。

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