君と歩いていく道
鏑木のほかに誰か待っていたのだろうか。

押谷のことを待っていたというのならば、すぐにでも連れてきてやるのに。


「誰か待っていたんですか?恋人?」

「・・・別に。」

「そうですか。」


感情の制御がうまくできていないようだった。
無理もないのかもしれないが、そろそろ寝かせなければ回復に支障をきたすかもしれない。

「疲れたでしょう。そろそろ寝てください。」

拭うことも出来ない涙を拭いてやると、真崎はおとなしく目を閉じた。
疲れていたのは本当だったし、寝ろと言われれば寝れる気がして。

何故自殺未遂を起こしたのかも、まだ何も言わないまま。
大月は病室の前に佇む押谷に勘付いていながら、わざと呼ぶことはしなかった。

起きている間に顔を合わせれば、患者も興奮してしまうかもしれない。
誰を待っていたのかが気になるが、押谷と別れて月日はそれなりに経っている。新しい恋人がいてもおかしくはない。

ただ、男装で通っている真崎なので、公にはできないだろうが。
まさか、それに疲れたとでも言うのだろうか。

「・・・ありえなくも、ないですね。」

男装しているといっても女性だ。それも、世間一般的には結婚適齢期と言われる年齢の。

とにかく話を聞かなくてはならない。
鏑木は本当に何も知らないようだったし、出来れば彼女の傍にいた人間が現れることを願う。

普段の往診よりも疲れたような気分で大月は病室を出て行った。

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