バラとチョコレート(X'mas 仕立て)


付き合って3年になる彼、綿貫諭(わたぬきさとし)は郊外にある小さなリストランテに務める駆け出しのシェフだ。


寡黙で真面目な5つ年下の彼と出会ったのは意外にも合コンだった。


当時仲良くしてた大学生のアルバイトの女の子にどうしても人数が足りないからとお願いされ、参加した合コン。


大学生同士の合コンで、みんなより5つ年上の私。


安い居酒屋に軽い会話、完全なるアウェーだった。


相槌を打ちつつ、グラスを傾けていると、向かい側の席に座る男の子に目がいった。


端正な顔立ちに、すっと伸びた背筋、寡黙ではあるけれど、口元に微かに笑みを浮かべ、会話に相槌を打っている。

 


「綿貫くんはさ、どんな女の人がタイプなの?」


「え?俺?・・・えっと・・・」


彼に興味を持ったのか私を誘った彼女が質問した。


「あ、ゴメン、無愛想だよね、コイツ。有り得ない位の人見知りだからさ~」


彼が質問に戸惑っていると代わりに、彼の隣に座る陽気な男の子が答えた。


そっかとその子は諦めたのか陽気な彼と会話を始めた。


私はじっと寡黙な彼を見つめた。


彼がさりげなく、空いた皿やグラスをテーブルの端に重ね、店員が来た時に下げやすいようにしていることに気付いていた。


気が利く子なんだな。その時は思った。

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