大事なものは、いつでもそばに
私は、いつの間にか泣いていた。今の自分は、あの時のようにあんな純粋な気持ちで恭介に接してはいない。あの事故さえなければ、私は…

窓に映る自分の顔が、あまりにも酷く失笑してしまう程だった。それでも涙は止まることなく、溢れるばかりだった。

「何で、泣いてんの…?」

いつの間にか戻ってきた恭介が、リビングの入り口に立っていたのだ。彼は、肩を小さく震えさせていた私の後ろ姿を見て、目を大きく開き、驚いていた。

恭介は、つかつかと私のそばに駆け寄り、うつむいて涙を流す私の顔を覗き込んだ。

「何かあったのか?」

彼は私の肩を掴み、激しく私に問いただした。

「離して…」

彼の手を振りほどこうと必死に抵抗した。しかし、そうすればそうするほど、彼の力は強くなり、私は床に膝をついてしまった。

そして、そんな私を落ち着かせるために、彼は私の肩を抱き、赤ん坊をあやすように背中をポンと優しく叩いたのだ。

その瞬間、私の頭は真っ白になった。とにかく信じられず、力いっぱい彼を突き飛ばしていたのだ。

「触らないで…!」

そう叫びながら…

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