幽とぴあらいふ
「アカンでー、そないな暗い顔しとったら美人さんが台無しやんか」

「伊月さん、僕は男ですからっ。その美人っていう表現やめてください。」


ブレザーにズボンといういでたちで抗議する悠希だったが、唇をとがらせて拗ねる表情は可愛らしいものだった。


「確かに、美人さんっちゅうか光希が日頃可愛いて連呼すんのも分かるなぁ。」

「もぉっ、人の話聞いて下さいっ。」


マジマジと悠希を見て話す伊月に、呆れ気味にため息をついて伊月の袖を引っ張った。


「伊月さんこそ制服はちゃんと着た方がいいですよ?」

「そうか?俺的にはちゃんと着てるんやけどなぁ?」


だらしなく着た濃紺の学ランから覗く赤いパーカーは、名門校の制服を見事に着崩し、赤く染めた髪で見え隠れする襟足からはタトゥーが覗いていた。
悠希より格段に身長も高い体格でこの風貌は、他人なら決して街では声をかけられたくない人種であろう事は間違いない。


「へへ。赤髪に赤いパーカー、ええやろ?見てみ、この耳。光希のヤツ、ルーズリーフて言いよんねん。」


悠希の話を無視して、耳に沢山つけたリングピアスを自慢気に見せびらかす伊月に悠希は苦笑した。


「朝から人の弟に馴れ馴れしくするな。馬鹿がうつる」


後ろからかけられた冷ややかな言葉に二人が振り向くと、和服が似合いそうな美丈夫な青年が立っていた。
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