5年目のクリスマス
ホワイトクリスマス


改札を抜けて、ため息を吐いた。

気持ちが盛り上がらない私を笑うように、空からは点々と雪が落ちてくる。

姉さんに無理矢理着せられたカシミヤのコートの襟を立てても寒さは変わらず、家に帰りたいという思いが更に強くなる。

帰りたいのは寒さのせいだけではないけれど。

「タクシー……空いてる」

タクシー乗り場を見ると、普段は行列ができているのに今は数人が並んでいるだけ。

どうして今日に限って、と肩を落とした。

混んでいれば、行かない言い訳もできたのに。

「行くしかないか」

ぽつりと呟きとぼとぼと歩き出す。

歩く度にコツコツと響くハイヒールの音。

履き慣れていないせいか、その音は不規則で、不安定な私の気持ちを表しているようだ。


< 1 / 22 >

この作品をシェア

pagetop