さよなら魔法使い

「コースケ…。」

懐かしいような不思議な感覚を覚える名前を口にする。

その瞬間にいろんなことを思い出し、リースは目も口も大きく開いて納得の声をもらした。

「ムッシューノエル！そうだった！」

「コースケのノエルの認識が違うから貴方たち毎日ノエルの話をしていたわね。」

「彼の言うクリスマス、でしょ？」

昔、日本からパン作りの修業に来ていたコースケという人物は仏教徒だというのにクリスマスを楽しむのだと言っていた。

そのあとに年末だ年始だと年が変わる１週間は祭りの連続だと言われ、まだ幼かったリースは全く言われている意味が分からず毎日質問していたのだ。

どうして家族と祝わないの？

どうしてお祭りなの？

どうしてご馳走を食べるの？

どうして苺のケーキなの？

どうしてノエルを祝うの？

まるで仕事にならないとよく父親に怒られて母親になだめられていたものだ。

「マドモアゼルは勉強家だな。」

コースケは困ったような顔で、それでも少し嬉しそうに微笑んでくれていたのを覚えている。

オーナメントを目の前にかざすと懐かしい記憶がどんどん思い出されてリースは温かい気持ちになった。