【X'mas】可愛い君へ。
可愛い君へ

今日は12月25日。

どこを見てもキラキラと輝くイルミネーションに、寄り添うカップルの姿が目に入るこの町は、まさにX'masモードで賑わっていた。


「ママ見て見てっ!あのサンタさん、可愛いっ!」


母親と手を繋ぐ小さな女の子が、カフェの壁に飾ってあるサンタの置物に指をさし目を輝かせている。
それを見て自然と頬が上がってしまった俺は、このカフェで働くスタッフの一人、青木勇太(アオキユウタ)。


(俺も、昔はサンタなんて信じてたっけ。)


どうして、X'masというイベントはこんなにも人をワクワクさせるのだろう。
サンタの正体を知って20年以上たった今でもそれは変わらない。

…いや。

きっと去年までは、他の人に比べたらそれ程ワクワク感などは無かった。
それどころか、店は忙しくなるし、道は混んでるしで苛々する事の方が多かったかもしれない。


それなのに…。



「早く帰らないとな。」



手に持つ紙袋に更に気持ちが高鳴るのを感じながら、俺は家へと足を急がせた。

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