ウェディング・チャイム
11月の行事予定

~試される授業公開~


~試される授業公開~


 教室に暖房が入るようになり、乾燥が気になる今日この頃。

 子ども達の机の前方に濡らしたタオルをかけたり、カーテンに霧吹きをしてできるだけ湿度を上げようとしているのだけれど、やっぱり乾燥注意報発令中の校舎内。

 先月、扁桃腺炎で学校を一日休んでしまい、ついに皆勤賞を逃してしまった私は、これでも体調管理には人一倍気を付けているつもりだったりする。

 甲賀先生に看病してもらった挙句、ぼろぼろ泣いて慰めてもらったあの日、お粥を食べてから眠ってしまい、気づいた時には夜だった。


『ゆっくり寝て、いっぱい食べて、元気になれ!
 明日は休んで、明後日からバリバリ働くこと』


 こんな置手紙と、夕食用の卵雑炊がキッチンに用意されていて、申し訳なさにまた泣けた。

 携帯を壊した挙句、貴重な休みに一日看病させてしまうなんて、ホントにどうしようもない私。

 この御恩は決して忘れてはならない。そして、気弱になっていた私を慰めてくれたことも……忘れられない。

 思い出すと赤面してしまうけれど、確かに『抱っこ法』には効果があるということを身をもって知った。




 職員室へ戻ると、更に高くそびえ立つ書類の山に囲まれた甲賀先生が、写真の整理をしている。

 机のスペース不足で、写真選びも大変そうだけれど。


「甲賀先生、ちゃんと寝てます? クマ、巨大化してますけど」

「ははは、気にすんなって」


 隣の席の学年主任は、来週行われる公開授業の最終チェックで猛烈な忙しさの真っ只中。

 健康状態は決して良くない、と思われるのです。


「甲賀先生は授業の準備で忙しいと思いますから、卒業アルバムの仕事はこっちに回してください」

「そうしてもらえるとありがたい。じゃあ、これが業者さんの名刺、作業はここまで進んでるから……」

「了解です。今日は早く寝てくださいね」

「できればそうしたい。公開授業が終われば楽になる、はず……」
 
「これが終わったら、次は期末業務ですね~」

「……期末業務が終われば楽になる、はず……」

「そこまで頑張るために、寝てくださいね~」


 二学期は長く、結構しんどい。

『あと○日で終業式』なんて数えながら、お互いの仕事をカバーし合う。

 頼れって言われるのは有難いけれど、私だって少しは頼られたいと思うから。

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