ウェディング・チャイム

 そう聞いた途端、甲賀先生の目がまん丸になった。

「はあっ? 俺が珍しく真面目に聞いてんのに、コーヒー噴くかと思ったぞ」

 ……やっぱり。

 女子とのやりとりの一部始終を語ると、甲賀先生も真面目な顔で答えてくれた。

「私の趣味は、音楽鑑賞です」

 甲賀先生もノリノリのお見合いモードで答えてくれたのが笑える。

 割と普通の趣味、かも。

 私もお見合いモードのまま、質問を続けた。

「具体的にはどのようなジャンルの音楽がお好きですか?」

「何でも。私の好きなアーティストはどんなジャンルも歌えますから」

「それは素晴らしいアーティストですね。ちなみにどなたですか?」

 すると、待ってましたとばかりに、背筋を伸ばして真剣な顔、シリアスな声で言われた。



「実は……貴女と同じ名前の、可愛らしい歌手です。だから貴女と初めて会った時、運命を感じました」

 ……聞かなきゃ良かった。

 三十四歳で好きなアーティストが『彼女』とは。

 そんなことで運命感じるなんてあり得ないし、さっきまでとは違う、私を見つめるその表情は完璧に面白がってるようにしか見えない!

「そうですか……ではいずれみっくみくにして差し上げます」

 ため息をつきながらそう返事をすると、満足そうな顔で頷かれた。

「はははっ! さすが藤田ちゃん。いいリアクションだ!」

「それはどうも……一応流行しているものは、子ども達とのコミュニケーションのために押さえてますから」

「お、いいねえ。それでこそ若い先生って感じだな。一緒に駆け回れることと、子ども達の会話に無理せず入っていけるのは、若手教員の特権だからな。ま、俺の趣味もその一環って事で。ホントの趣味は違うけどさ」

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