ウェディング・チャイム
「だって、せっかく用意してくださったお茶ですよ。そのお気持ちを考えたら飲みますよ! ……でも、お便りには一応、お茶菓子は遠慮いたしますって書いたんですけれど、皆さん用意して下さっていたんですよね」

 学級通信には、家庭訪問スケジュールと共に、お茶とお菓子は遠慮させて頂きますという事も書いた。

 でも、今日訪問した五軒全てのお宅でご丁寧にお茶とお菓子を出されたので、お断りできず膀胱がパンクしそうな事態に陥った。

 そんな私を見て、甲賀先生は得意げな表情でこう言った。

「まあ、その程度の書き方だと当然こうなる。俺がお茶を出されないための方法を伝授してやるよ」

「え、そんな方法があるんですか?」

「言っておくけれど、今年はもう家庭訪問週間が始まってしまったから使えないぞ。来年以降のために、覚えておくといい」

「どんな方法ですか?」

「担任を迎える保護者としても『何も用意しないでください』って言われると困るものらしいんだ。だって、普通はお客様が来たらお茶くらい出すだろ。先生にだってお客様と同じ対応をしたくなるのが人情ってもんだ」

「確かに、テーブルに何も出てないとちょっと……ってなりますね」

「だから、お茶菓子以外の物を用意しといてもらうんだよ。俺の場合『お子さんの小さい時の写真を見せてください』って書く。そうすると、訪問してすぐ、教え子の可愛い赤ちゃん時代の写真が見られて、癒されるんだよな~」

「わあ~、それ、見てみたいです!」

「写真スタジオで撮った分厚いアルバムを用意してくれてたり、最近はデジタルフォトフレームを出してくれる保護者もいるよ。そういう可愛い写真を見てから話をすると、お互いに和やかな気分で会話できて、一石二鳥だ」

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