ウェディング・チャイム
「別に宿題にこだわる必要はないさ。足りない分は家庭学習で補ってもらえば、中学校へ行ってからも自分で勉強できるようになる。多いって言ってる家庭には、時間の使い方を工夫してもらえるよう、協力をお願いするって感じで」

「えっと、具体的には?」

「家庭学習の充実を図る、って事で、学級通信によくできている子の家庭学習ノートをコピーして掲載するんだ。これを参考にどうぞってね。それでも家庭学習で『何をしていいのかわからない』っていう子のために、家庭学習ノートに貼れるプリントを何種類か用意して子どもに選ばせるといい。俺のクラスではそうやってる」

「なるほど……さっそく試してみますね!」

「お便りには『中学校生活に向けて、自分で受験勉強できる子になって欲しいので、家庭学習にも力を入れてみましょう』っていう感じで書くといいぞ」

「ありがとうございます。そうと決まれば早くお便り作らなきゃ!」

「頑張れよ!」


 ……それから二時間半後。

やっとお便りと明日の準備ができたので、そろそろ帰ろうと思った。

甲賀先生も隣でずっとパソコンで文書を作成していたけれど、どうやら終わったらしい。

「終わったか? じゃあ、一緒に出るぞ」

「あ、はい」

 気づいたら、職員室には私達しかいなかった。ということはもしかして。

「待っててくれたんですか?」

「まあね。管理職も七時まではいたんだけど、さすがに早く帰りたいような素振りだったから、俺がカギ預かったんだ」

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