ウェディング・チャイム
 
 結局、全員リレーでは勝てたものの、トータルでは紅組に負けた白組。


 やっぱり学年主任が率いる一組は伝統的に強いらしく、今のところ三連敗だそう。

 それでも、やるだけのことはやったという気持ちから、みんなの顔は晴れやかだった。

 グラウンドで行った帰りの会で、稜君と萌香ちゃんがみんなに言った言葉も嬉しかった。

「今はいっぱい喜んでもいいけど、あとは落ち着こう。リレー終わってから、一組の最後の女子、泣いてたし」

「わたしも練習の時、バトン落としちゃったから……。本番で落としちゃうなんてすっごくショックだと思う」

 みんなもそれを聞いて頷いた。

 私からこれ以上言わなくても、みんなはわかっているようだ。
 
 それがとても嬉しくて、密かに泣きそうだったけれど、私にはまだ仕事が残っている。


「さあ、みんな入場門前に並んで! 写真を撮るよ!」

 いつものように、写真屋さんに卒業アルバム用の行事写真をお願いする。

 子ども達の端っこに並ぶ私より、男子で一番背の高い悠馬君は、頭ひとつ分位大きい。

 ……きっとまた、甲賀先生にこの写真を見せたら笑われるんだろうな、なんて考えつつ、百八十二センチの巨体を目で探してみた。

 グラウンドの隅で作業中だったらしい、うちの大きな学年主任も、こちらを見て微笑んでいる。

 私も笑いかけたけれど、気づいてもらえただろうか。


 子ども達が帰った後、グラウンドの後片付けをしている私の頭上で、甲賀先生の声が響いた。

「良かったな。おめでとう。……という訳で、今度の日曜日、飯食いに行くぞ」

「ありがとうございます。ホントにおごってもらっちゃっていいんですか?」

「男に二言はない!」

「やった! じゃあ、ええっと……ラーメンの美味しいお店、連れてってください!」

「……そんなんでいいのか? 欲がないなぁ」

「お互い、給料日前じゃないですか」

「そんな風に気を遣われたら、俺が甲斐性なしみたいでカッコ悪いんだけど。まあいい、美味いラーメン屋、考えとくよ」

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