ウェディング・チャイム
 
 そして、全国の三学期制を採用している学校の先生方も、子ども達一人ひとりの顔を思い浮かべながら、仕事に励んでいる。

 大変なのは、自分だけじゃないのだから。


 男子の所見が全員分終わり、女子も五名終わった。

 残り十名となったところでパソコンの時計を見たら、もう二時を過ぎている!

 そろそろ電話してみようかな、とスマホを手に取って、着信履歴から甲賀先生を選ぶ。

 私から甲賀先生に電話をするのは初めてなので、結構ドキドキする。

 二回コールですぐ出てくれた。


『もしもし』

「藤田です。寝たら死ぬぞ~、なんて。さすがに起きていましたね」

『当然。進んでるか?』

「それはもう! あと女子十人だけです」

『ふふふ、俺はもうあと八人だ!』

「くううっ! 二人負けた……でも、あと出勤まで五時間半ありますから、間に合わせますよっ」

『出勤前の準備時間も入れたら正味四時間半だ。風呂も入らないでずっと仕事してたんだよな~。せめて出勤前にシャワーは浴びたい。プールの塩素は落としておかないと、お肌と髪の毛が傷んじゃうだろ?』


 その言い方にちょっと笑いつつ、我が身を振り返ると……私も仕事に追われて、シャワーすら浴びずにいたことに気づいた。

 甲賀先生に言われるまで気が付かなかったなんて、女として終わってるよ、私!


「……忘れてました。プールの後だったのに、洗い流してない!」

『それはますます早く終わらせなきゃ、綺麗な髪が痛むぞ~。今時珍しい、黒髪ロングのストレートだもんな、藤田ちゃんは』
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