恋したメアリ
そこにいたのは浅川芽有ではなかった。


浅川の席に座るのは、まったく見知らぬ少女だ。



「小諸、前向け。ホームルームだぞ。
浅川、体調はもういいのか?」



担任がまず俺に言い、次にまったく違和感なく、浅川の席にいる少女に問いかけた。


「はい、もう治りました」


少女は答えた。
やはり、声も俺の知っている浅川芽有の声ではない。

担任には、彼女が浅川芽有に見えるのだろうか。

いや、先まで、友人たちもこの少女を浅川として囲んでいたではないか。

今の担任とのやりとりに不審を感じる者もいないようだ。



俺がおかしいのか?

いや、そんなバカな。
好きな女の子を見間違えるはずがない。


「小諸、よそ見はやめろ」


担任にもう一度叱責され、俺はやむを得ず前を向いた。

混乱していた。
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