恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
起きているならまだしも、寝ている和泉くんがいる部屋のドアを叩くって緊張する。
申し訳ないし、本当にプライベートな部分に出しゃばってお邪魔している気分になるし。
ああもう、本当に私ごときがごめんなさい。
そんな事を思いながらも深呼吸してから、右手でノックして和泉くんの名前を呼ぶ。
それでも返事がないからもう一度ノックしてドアを開けようとした時。
静かにドアが開いて、ぼんやりした顔の和泉くんが出てきた。
「あ、おはよう。今日、休みじゃないよね? 今六時十分すぎたところだけど、なかなか起きてこないからどうしたのかと思っ……和泉くん、熱ある?」
寝起きでぼんやりしているだけかとも思ったけど、なんだか様子がおかしい。
けだるそうだし、視線もうつろだ。
計っていないから分からないと言う和泉くんのおでこに手を伸ばすと、高い熱を持っているのがすぐに分かった。
「絶対熱あるよ……。体温計は?」
「……持ってない」
「嘘、先週私が熱出した時は持ってきて無理やり計らせたじゃない。
もしかしてそれ、私の風邪が移って……」
「違う。職場で隣の席のヤツがずっと風邪引いてるからそのせいだろ。たいした事ない」