恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
◇幸せを告げる鐘の音



「まさか莉子と奏一がこんな事になってるとは思わなかったから本当に驚いたよ。
おまえ、女に興味ないのかと思ってた」

土曜日の夕方、和泉くんが部屋に遊びにきた。
高そうなお酒を二本も抱えて。

持ってきたのは、日本酒とシャンパンらしいけど、飲めないからどれくらい高級だか分からなくて運ぶのにすごく緊張してしまった。

シャンパンが高いって事はなんとなく知っていたから、そんな高級酒に粗相があったら大変だと思って、本当にそっと、初めて赤ちゃんを抱くみたいな感覚で運んでいたのに。
それをしばらく見ていた奏一くんは埒が明かないと思ったのか、横から奪ってスタスタと歩いて行ってしまう。

それを、和泉くんが3つのグラスに注いでいったけれど……。
お酒に詳しくない私でさえそれはちょっと……と思うほど並々についでくれた。
高いお酒って、グラスの半分くらいまでしか注がないイメージがあったから。

だから、もしかして高いなんていうのは私の思い込みで本当はそれほどじゃないのかな、なんて思って奏一くんにこっそりいくらくらいなのかを聞いて、返ってきた三万という金額に言葉を失ってしまった。

そんな高級な飲み物飲んだ事ないし、落としたら割れて全部が言葉通り泡になっちゃうのに、奏一くんはなんであんなに普通に持ててたんだろう……。






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