恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
◇アンティークの時計



佐和ちゃんいわく、今の私はとてつもなくおいしい状態にいるらしい。

好きかもしれないと思う人の部屋に一緒に住まわせてもらっているのだから、そう言われる意味も分かるけど、なんだか複雑だ。
和泉くんと一緒に住むことになったのは、和泉くんの厚意からなんだから、それをおいしい状態だなんて言ったらきっと罰があたる。

親切を恋愛感情で返したりしたら、それこそ迷惑だ。
きっと和泉くんが同居を言い出してくれたのは、私を一度振っているからだろうから。

拒否してる過去があるから、同居したところでもうそんな事にはならないだろうと踏んでの提案だと私は思ってるし、実際そうだと思う。

それを言ったら佐和ちゃんは、いくら和泉でもそこまでの親切を好きでもない女にするかなと納得いかなそうにはしていたけれど、それ以上は何も言わなかった。

そんな佐和ちゃんに、ランチをおごってもらったお礼を言ってから買い物を済ませて。
朝預かった合鍵で部屋に入った。

それから、洗濯物をしまってお風呂掃除を済ませて、夕飯作りにとりかかったのが16時半。
作り始めてから、そういえば和泉くんの帰宅時間を聞いていなかった事に気づく。

昨日会った時が会社帰りだとしたら、19時から20時くらいには帰ってくるのかな。


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