人知れず、夜泣き。

 「・・・あ、イヤ。 ワタシの食べ刺しのお粥食べたら、風邪移っちゃうから」

 オレに気遣ってか、変な優しさを見せる木内。

 だから木内、作り笑いが下手くそ過ぎなんだって。

 「じゃあいいよ。 鍋に張り付いてるやつ食ってくる」

 キッチンへ行こうと立ち上がると、

 「待って!! 行かないで!!」

 木内が捨てられそうな女の様に、オレの左足に絡み付いてきた。

 何やってんだ、木内。

 今の木内がやると、やけに物悲しいっつーの。

 そんな木内を見下ろす。

 「木内さん、正直に言っていいよ。 オレの作ったお粥は、美味しく??」

 「・・・・・・・・・ない」

 木内が超小声で答えた。




 ・・・あぁ、やっぱりか。

 ・・・もう買って来よう。

 そうだよ、何で張り切って作ろうとしたんだよ、オレ。

 初めから『じゃあ、お粥買ってくるわ』って言ってコンビニに行けば良かったのに。

 「ごめんね、木内さん」

 具合悪い時に変なもの食わせて。

 玄関へ行き、木内のアパートを出ると、トボトボとお粥を求めてコンビニへ。
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