人知れず、夜泣き。
 
 「あ・・・すみません。 ワタシたち、失礼しますね」

 元カレたちに『ペコ』と頭を下げる木内の腕を引っ張りながら、掃けた場所はお酒コーナーで。

 「・・・飲むか!! 木内さん!!」

 目に付いたチューハイの缶を、ガンガンかごに放り込む。

 「イヤ、イイ。 飲んだら泣く。 100%泣く」

 木内が、オレがカゴに入れたチューハイを、次々棚に戻す。

 「たまになら愚痴聞いてあげるって言ったっしょ。 じゃないと木内さん、泣いて夜の街を徘徊しながら一人酒するでしょ」

 棚に戻されたチューハイを、再度カゴに入れる。

 「・・・何故それを」

 木内が、驚きながらも眉間に皺を作りながらオレを見た。

 「棚卸しの日、あの後タクシー降りて木内さんの事追いかけたら、木内さんがおっさんみたいな飲み方しながら泣いてたから」

 そうだ。 忘れてた。 オレ、あの日、木内に散々な目に遭わされたんだった。
 
 「・・・え?? ストーカー??」

 木内が眉間の皺をより深く刻んだ。

 は?? 何オレに引いちゃってんの?? 木内。 

 ふざけんなよ。 オレにした事謝れよ。
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